おコメの開発には、交配から現地試験まで
いくつもの工程があります。
ここでは、新ブランド米がどんなお米なのか、
どんなふうに誕生したのか、
意外と知らないお米の性質など、
様々な視点からご紹介します。
お米の開発は、交配という異なる品種を組み合わせて新しい品種をつくることからスタート。例えば、暑さに強いAと甘みの強いBという品種を交配して、どちらの良さも併せ持つABという品種をつくります。今回の新ブランド米では、毎年10組の種類をマッチング。お米たちの運命的な出会いで、私たちの想像を超えた品種が数多く生まれています。
交配の次には、固定という作業があります。固定というのは親の持つ特長を子どもに「定着」させること。この作業を行わなければ、新品種の特長を子どもの品種に受け継げなくなる場合があるのです。しかし、稲は自分のめしべに自分の花粉を受粉させる「自家受粉」ができるため、これを何度も繰り返すことで、親とそっくりな子どもをつくることができます。このプロジェクトでは、お米の品質を安定させるために5回も栽培し固定を行いました。だからこそ、暑さに強くて変わらない美味しさを実現できました。
数多くの品種を交配させた結果、この相思相米プロジェクトでは10,000種類が誕生。この中から、暑さに強くてより美味しい品種を選んでいく「選抜」という工程に進みます。穂が出るタイミングや、稲の大きさや形、病気への耐性など、開発担当者が一つひとつ目視と触手、さらに専用機で検査をして厳選。最終的には、倍率10,000倍の狭き門を勝ち抜いた新品種がデビューします。
一般的にお米は透きとおっていますが、長時間にわたって高温にさらされると部分的に白く濁ってしまうことがあります。これは、人で例えると熱中症にかかってしまった状態のことを指します。その白く濁ってしまった粒は白未熟粒と品評され、お米のランクである「等級」を下げる原因になります。
品質評価と呼ばれる「美味しさの格付け」も大切な工程の一つです。まずは食味計で理化学分析を行い、美味しさを“見える化”。さらに、実際に食べて評価する食味官能調査を実施します。この調査は、研究員はもちろん、JAグループ兵庫の職員から卸売業者の方まで、さまざまなお米のエキスパート、いわゆるコメ奉行たちが評価します。評価は、基準米(キヌヒカリ)と試験対象米を比較する形式で行われます。正確に審査するために、指定の炊飯器で決められた手順に沿って炊かれたお米を使用し、「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「総合評価」という6つの項目で評価します。さらには、「一般財団法人日本穀物検定協会」に在籍する食味評価のプロにも最終確認をしてもらうほどです。市場に出回っているお米は、このような厳しい目を潜り抜けているのです。
新ブランド米は、暑さに強く病気になりにくい性質を持っているため、現在キヌヒカリを育てている農家さんはもちろん、これから農家になりたい人にもおすすめです。将来的には、このお米をたくさんの農家さんが育てることで、兵庫県内でのお米の安定供給につながります。つくる人を増やすことにも一役買えるお米と言えるでしょう。
現在キヌヒカリに代わる新品種は、10,000種類から2種類まで選定しています。この2つは兄弟品種で、暑さに強い親品種と食味に定評のある親品種から生まれました。最後の一つを決めるために、兵庫県内各地のほ場で現場試験を行い、収穫量や品質などを評価している段階です。試験結果や農家の声などを踏まえて、プロジェクトメンバーがさまざまな角度から検証し、最終決定します。(2024年9月現在)