南あわじ市の米リーダー
みんなに美味しく食べてもらってこそ、 良いお米ですから。
JAあわじ島 神田 智彦さん
お米づくりに、もっと誇りを。その思いを胸につくり続けてきた。
父親が兼業農家をしていた影響で、私も22歳から農家として働き始めました。私がお米づくりをしている南あわじ市は、兵庫県の中でも特に気温が高い地域です。そのため、酷暑によって育てたお米が白く濁ってしまうことが多いんです。そもそも、お米には等級と呼ばれるランクがあり、一等・二等・三等・等外の四種類で格付けされるのですが、ここのお米は二等もしくは三等の評価を受けてしまうことがほとんどでした。そんな状況だからか、周りの農家さんも一等米を諦めている人が多く、中にはお米づくりそのものを辞めてしまう人もいたんです。「これはまずいな」と危機感を抱きながら、私自身もお米づくりを続けてきました。
篠木さんとは「親友か!」ってぐらい電話しましたね。
お米づくりは諦めた方がいいかもしれない…そんな悩みを抱えていたある日、私の田んぼで新ブランド米の試験をさせてほしいと連絡が入りました。実際にプロジェクトに携わってみて感じたことは、開発に携われる嬉しさと、失敗できないという途轍もないプレッシャーです。でも、その重圧を乗り越えられたのは、篠木主任研究員をはじめとした周りの方たちの支えがあったからだと感じています。研究員の方たちは、忙しいにも関わらず月に一度、田んぼまで足を運んで状況を確認し、育て方のポイントや害虫被害の防止方法などを的確に指導してくださいました。篠木さんとは一時期、親友か!と思うくらいやり取りをしていましたね。
まさかこの地域から、一等米を出せるなんて思わなかった。
新ブランド米の研究成果と皆さんのサポートのおかげで、ついに一等米を出すことができました。つくり方は変えずに品質が劇的に変わったので、信じられない気持ちでしたね。また、農家の視点で言うとつくりやすさも重要な要素です。キヌヒカリに代わる新品種は、収穫時期は変わらず、背丈はやや小さくなりました。ですので、品質が安定しやすく非常に管理しやすいんです。つくり手が求めるポイントは全部叶えている印象ですね。変わらない美味しさを実現しているので、つくる人も食べる人も嬉しいお米だと思います。
最高ランクが出た時の感動を、多くの農家さんと分かち合いたい。
新ブランド米は、来年には販売を迎えますが、まだまだその認知度が高いとは言えません。そのため、これからは広げる活動にもチャレンジしていきたいと考えています。これまで手塩に掛けたお米が酷暑で品質低下するなど、私を含め南あわじ市の米農家たちは大変な思いをしてきました。だからこそ、私が主体となって、一等が出た時の感動を他の農家にも伝えていきたいです。このお米が普及することで、お米づくりを諦める人を減らしたいですし、新しく米農家を始めたいという人が出てくるかもしれません。それだけの可能性を秘めたお米になる。そう私は確信しています。