八幡営農組合の発起人

過去の失敗を糧に。この新品種を、大切に育みたい。

生産者(加古川市) 芦原 安男さん

地域農業の持続的発展のために、営農組合を立ち上げた。

私はもともと兵庫県の鉄鋼メーカーで働いていましたが、40代半ば頃から農業に携わるようになりました。また、60歳の時にはお米づくりを中心とした地域農業の持続的発展を目標に「八幡営農組合」を立ち上げました。

この組合では、お米づくりに関する情報共有を定期的に行っていますが、最近では高温によるお米の白濁化・品質低下が議題となることも増えてきました。二等米や三等米ならまだしも、白濁化した米粒では規格外となり、売り物になりません。農家だけでなく、農協も困っている状態が続いていたんです。

みんなのバックアップがなかったら、諦めていたかもしれない。

暑さに強いお米が必要だと感じていた時、キヌヒカリに代わる新品種の現地試験の打診がありました。内心、「ようやく来たか!」と思いましたね。

候補に挙がっていた品種の一つを試験しましたが、苗の生長が思わしくなく、根の張りが弱いなど、作る上での課題がありました。失敗続きで、もう諦めようかと思いましたが、職員の方々が親身に相談に乗ってくれたのはありがたかったですね。そうした周囲のバックアップもあってか、昨年の試験米は非常に良い出来になりました。

暑さに強く、スズメの食害にもあいにくい。根性のあるお米なんです。

新品種は、暑さに強いだけでなく、稲穂よりも止め葉が上にあるという特長があります。止め葉が長いと籾を隠せるため、スズメによる食害にあいにくいように思います。長い止め葉は作業負荷がかかるデメリットもありますが、私の田んぼでは大型コンバインを使っているので作業負荷は特になく、メリットしかないですね。

さらに、背丈がキヌヒカリと同程度で倒れにくいという点も大きな強みです。この八幡地区は台風の被害も多いので、頼りになるお米ができたと感じています。

このお米を皆さんの食卓に届けられる日が、待ち遠しくてたまらない。

実は以前、今回とは別の新品種開発プロジェクトに関わったことがあるんです。品質も良く、売れ行きも好調なお米でしたが、収量を追い求めた影響で食味が劣化し、誰からも見向きもされなくなるという苦い経験をしました。だからこそ、今回は同じ轍を踏まないよう、大切に育んでいきたいと思っています。

幸いなことに、今回のお米は試食してもらった皆さんには大変好評で、ぜひお米を分けてほしいとのお声もたくさんいただいています。皆さんに喜んでもらえることが何より嬉しいですし、一日も早くこのお米を皆さんの食卓に届けたい。その日が待ち遠しいです。